卵アレルギーがあるためインフルエンザの予防接種ができません。

Q:
小学1年の子供が、卵アレルギーがあるためインフルエンザの予防接種ができません。『タミフル』を予防薬として服用することで代替できると聞きましたが、シンガポールでもできますか?

A:
予防接種では卵アレルギーがしばしば問題になりますが、インフルエンザと麻疹ワクチンだけが卵アレルギーの注意が必要なワクチンです。しかしながらこれも、最近では高度に精製して有害物質が除去されたワクチンが作られるようになったため、アレルギー症状を起こすことは極めてまれといわれています。
可能性は否定できませんが、まずおこることはないという認識でいいと思います。
通常は、卵を食べて、てきめんに下痢などの症状を起こしたり、蕁麻疹が出るようなことが無く、卵が皮膚について皮疹が生じたりしなければ予防接種は可能と判断できます。
ちなみにアメリカ小児科学会では、卵アレルギーの場合、1994年までは麻疹などの予防接種不可としていましたが、1997年からは予防接種不可とはしていません。
日本の厚生労働省の予防接種ガイドラインではインフルエンザ予防接種に関しては、「卵アレルギー(食べるとひどい蕁麻疹、発しんがでたり、口腔内がしびれる者)に対しては接種を避ける。」とあるのみです。

タミフルはインフルエンザに対して予防効果と治療効果があります。日本には大人用のカプセルと子供用のドライシロップがありますが、シンガポールには大人用のカプセルしか存在しません。
治療の場合、通常1日2回、5日間使用します。また、発症2日以内に使用を開始する必要があります。適応年齢は1歳以上となっています。
予防の場合は通常量の半分を流行期に6週間服用する必要があります。適応年齢は13歳以上となっています。また、日本では現在のところ保険適応となっていません。
シンガポールでは予防内服可能ですが、前述のとおり大人用しかありません。また、日本でもシンガポールでも、予防内服にかかる費用は健康保険、海外旅行者保険共にカバーされないので、自費となります。また、薬の添付文書には、予防内服は予防接種の代替にはならず、予防接種のかわりとして使用すべきではないとの記載があります。ですから、予防接種の代替としてタミフルを使用できるというお話は間違いです。
また、大人も含めて、予防内服の安全性は未確立と添付文書にも記載されています。
参考までに開発元のRocheからの一般向けタミフルのページ(英語)です。
http://www.tamiflu.com/default.asp
こちらは薬品に関する添付文書(英語)です。
http://www.rocheusa.com/products/tamiflu/pi.pdf

以上のことから、日本でもシンガポールでもタミフルを予防のために小児が使用するにはさまざまな問題、困難があると思われます。自己責任の下に使用することは可能かもしれませんが、メリット、デメリットを考えると個人的にはお勧めできません。
むしろ、人ごみには出ない、うがい手洗いの徹底、睡眠や栄養をしっかり取り抵抗力をつける、家族が予防接種等で防御し家庭に持ち込まない、それでも万が一感染した場合には早めの治療を行うといった、基本的な対処法を強化すべきと思います。

ラッフルズ・ジャパニーズ・クリニック 大西医師
シンガポール 知って得する医療の豆知識