子供の扁桃腺除去

Q:
マレーシア在住の者です。子供(7歳)の扁桃腺除去を考えております。
2年程前から度々高熱を出すようになりました。小児科の先生には扁桃腺はそれほど大きくないから成長するまで待った方が良いと言われましたが、耳鼻科にかかったところ、扁桃腺、アデノイドが大きいので、除去した方が良いと診断されました。実際、鼾もひどく、無呼吸も疑われるので除去をしたいと思うのですが、この手術はマレーシアでも安心してできるものなのか、日本で受けた方が良いのか教えてください。マレーシアでは手術当日に帰宅できると言われましたが、日本では何日か入院をすると書かれていましたので、どの様な違いがあるのか教えて頂けたらと思います。

A:
一般には年3,4回以上の扁桃炎を繰り返す場合、あるいは扁桃腺が大きいために睡眠時無呼吸症候群をおこしている場合は扁桃腺を摘出した方が良いとされています。今の場合お子様はいずれにも該当するようですから手術を受けられた方が確かに良いと思われます。

海外での手術というと大変心配されるのは当然と思います。しかし扁桃腺とアデノイドの手術の難易度自体は実はそんなに難しいものではなく、日本でも通常は比較的若手の医師が担当することが多いのが事実です。ですので、一定水準以上の施設で十分な研修を経た医師であればマレーシアの医師でも日本と大差はないものと推察します。ただ、難しくない手術だからといってまったく合併症のない安全な手術という意味では決してありませんので、その点ご注意ください。

手術の方法ですが全身麻酔下に口の中から道具を入れて扁桃腺を摘出します。昔ながらのメスで切る方法や最近は特殊な電気メスのようなもので削るなど、施設によって使う道具は多少異なりますが、共通するのは手術直後はのどの奥に扁桃腺を摘出した傷跡がむき出しに残るということです。この傷はもちろん少しずつ癒えて1ヶ月ほどできれいにはなりますが、完全に治るまでに『出血』という合併症のリスクがあります。

ここで銘記していただきたいのは手術自体はどの国で行われたとしても出血などの合併症リスクは常にあるということです。

さて、マレーシアと日本の入院日数の違いについてですが、これは医療の水準や方法の違いから来るものではなく、おそらく医療をとりまく社会的な制度の違いが出ているものと考えられます。ご指摘の通り日本で扁桃腺手術をするとなると多くの施設は1週間前後の入院を求めます。これは術後の出血の可能性を考えて少しでも長い間患者さんを毎日チェックしたいとの医師の考えもありますが、それが可能なのは何よりも医療費が大変安く比較的長期の入院が許されているという日本の社会情勢があります。ここシンガポールや北米のように医療費の高い国では扁桃腺摘出術はやはり日帰りまたは1泊で実施されるのが一般的です。

最近は日本でも、多忙で長くは入院できないという患者さんのニーズに合わせ一部の施設では入院の短期化が急速に進んでいます。大切なことは日帰りや短期入院で実施しても緊急時にきちんと対応してもらえるのか、そして完全に傷が癒えるまでの1ヶ月の間責任もってフォローしてもらえるのかだと思われます。

したがって医師の経験・技量および病院のフォローアップ体制がしっかりしていれば、あとは相談者様の他の事情で決まってくるものと思われます。納得いくまで主治医と相談されて結論を出されることをぜひお勧めいたします。

ラッフルズ・ジャパニーズ・クリニック 石川 修司医師
シンガポール 知って得する医療の豆知識