デング熱潜伏期間中の予防注射

Q:
1歳5ヶ月の子供の事でお伺いします。近々DPT、Hib ポリオの混合ワクチン接種予定ですが、数日前に滞在していたクアラルンプールで蚊に刺されてしまいました。現在KL周辺ではデング熱が流行しています。潜伏期間(3-15日)が完全に過ぎるまで、接種を見合わせたほうがいいでしょうか?通常潜伏期間は1週間程度と聞いたのですが、刺されてから1週間で接種しても大丈夫でしょうか?またデング熱潜伏期間中にワクチン接種した場合、どのような事が起こり得るのでしょうか?私(母)がデング熱に感染した場合、その間に知らずに授乳してしまっても大丈夫でしょうか?

A:
実は、5歳未満のお子様でのデング熱発症の可能性は低いといわれています。これは5歳未満では全般的な免疫機能が未確立なため、デングのようなある種のウイルスでは体内の免疫システムに捕捉されることなく体を通過して出て行ってしまい感染自体が成立しない、あるいはたとえ感染しても症状が出ない不顕性感染で終わるからだと考えられています。以上より、デング熱発症の可能性は非常に低いと思われるのですが、もし感染していると仮定して、デング熱の潜伏期間は約1週間と考えられますので、それまでは発熱等の症状に注意が必要と考えられます。したがって無理にこの時期に予防注射を行うことはお勧めできません。また、幸いにして潜伏期間中の予防注射は特に健康被害を引き起こす可能性は少ないと思われますが、本来初期免疫の追加接種と思われるDPT、Hib、Polioの接種は1ヶ月前後接種が予定より遅れたからといって問題とはなりませんので、無理に接種を急がれる必要性はありません。お子様の体調と相談しながら接種のタイミングを考えていただいて結構です。さらに、デングウイルスに感染しているお母様の母乳中にはデングウイルスが出てくる可能性はこれもまた低いものと言われていますが、たとえ母乳中にウイルスが存在したとしても経口摂取されたウイルスは感染性が無いと思われます。デング熱は蚊に刺された結果、体内にデングウイルスが注入されて感染が生じるという以外に感染ルートは今のところ存在しないようです。

ラッフルズ・ジャパニーズ・クリニック 永山医師
シンガポール 知って得する医療の豆知識