癌検査の新しい機械?

Q:
先日、日本の一般雑誌で癌の検査の新しい機械(たしかPAT?)があるというのを、見つけました。
糖分を体に注射して、何分かすると癌細胞が糖を取り込んで、その機会で調べると癌のところが発色して小さい癌でも見つけることが出来る、というものでした。
日本では8~10万円位で検査が出来るとかいてありましたが、シンガポールでも、そのような検査を受けることができるのでしょうか。又、できるとしたら、いくらぐらいで出来るのでしょうか。

A:
PET(ペット)検査とは、「ポジトロン断層撮影法」のことで、X線CTのような装置で、体を断層画像としてとらえ、病変を的確に診断する新しい検査法です。(PATではありません。)
この検査では、ポジトロンを放出する薬剤を、静脈から注射したり、吸入したりします。薬剤が体の特定の部位に集まる様子を、「PET装置」で撮影します。検査の目的に合わせて薬剤を選ぶことにより脳や心臓、癌などの診断ができるのです。
癌細胞は正常の細胞よりも分裂が盛んに行われるため、グルコース(糖分)がたくさん必要とされますそのため18F-FDGという薬剤を静脈から注射しますと、癌の病巣に多く集まります。それをPET装置で撮影し、癌の存在の有無、大きさを画像化します。
PET検査で正確な診断ができると治療法や治療範囲を決めるのに大変役立ちます。特に予想外の病巣を見つけることで、治療範囲を正しく決めることができます。18F-FDGのPET検査は、ほとんどの癌の診療に有用です。肺癌や大腸癌、食道癌、膵癌などの消化器系の癌、子宮癌、卵巣癌などの婦人科系の癌や甲状腺癌、乳癌、悪性リンパ腫や骨腫瘍、悪性黒色腫などの診断にも役立ちます。
癌の転移をみつけるのにも役立ちます。転移の有無によって治療法が変わりますので、この検査は有用です。しかしながら、すべての癌で役立つわけではありません。使用する薬剤は腎臓を経て尿に排泄されます。したがって、腎臓や膀胱に癌があっても診断は困難です。また、肝臓癌、胃癌、大腸癌、前立腺癌などは超音波検査や内視鏡検査の方が早期診断には有用です。このように、PET検査が適しているものと適していないものがあります。このように全ての癌がPET検査のみで早期発見できるわけではありません。これまでの超音波検査、内視鏡検
査やCTなどその他の検査法とPET検査を組み合わせることも必要です。
シンガポールでもアジアメディックやシンガポールジェネラルホスピタル、マウントエリザベスホスピタルでPET検査を受けることができます。料金は設備ごと異なりますが、全身検査で3000~4000シンガポールドル、1スライスで2000~3000でしょう。シンガポールではまだまだ高価な検査です。

ラッフルズ・ジャパニーズ・クリニック 大西医師
シンガポール 知って得する医療の豆知識