就労パス新基準 人材紹介会社への直前アンケート

2012年1月から基準が変わるシンガポールの就労パス制度、前回はその制度の中身を解説しました。その第2弾として、今後、シンガポールでの日本人就労状況がどう変化していくと予想されるか、シンガポールお役立ちウェブ協賛の人材紹介会社へアンケートを依頼しました。

ご協力頂いたのは以下の8社です。
テンプスタッフ グッドジョブ・クリエーションズ アージス・リクルートメント SDS(シンガポールで就職)
YNキャリアコンサルタンツ ファロ・リクルートメント セールスブリッジ RGF HR エージェント(順不同)

皆様のシンガポールでの就職活動・転職活動のご参考にしてください。

・アシスタント・簡単な事務職・コールセンター等の日本人求人は今後どうなるか?
50% - 減らない
50% - 減る

回答が大きく分かれました。「日本人であること」が採用理由であることも多く、例え給与が上昇しても必要という考えがある一方で、給与上昇により、採用を減らす・見合わせる企業も出てくるという考えもあります。採用する企業により考え方が異なると予想されます。

・日本人の新卒(四大卒)採用は?
88% - 減る
12% - 減らない

給与上昇により、未経験・即戦力ではない新卒の採用は益々厳しくなるという予想が大方を占めています。

・日本人PR・DPの採用は?
88% - 増加する
12% - 増加しない

就労パスが不要なPR(永住権保持者)・DP(就労パス保持者の配偶者)は、最低給与や学歴に関係なく雇用できる為、企業側には益々採用へのハードルが低い人材になるでしょう。

・日本人求人の給与上昇はあるか?
88% - ある
12% - ない

現在、Q1のEPで働く外国人の多くが新制度の給与水準と同等かそれ以下の給与で働いていますが、就労パスの給与水準が上がったから即採用しないということは考えにくく、またシンガポールの物価(特に家賃)上昇もあり、企業も給与水準を上げると予想しています。

・よりプロフェッショナルな求人 (駐在員の代わり)は増加するか?
50% - 増加する
50% - 増加しない

意見が大きく分かれました。昨今のベンチャー・中小企業のシンガポール新規進出に伴い、海外経験を持つ人材を新規採用するケースは増えています。一方でプロフェッショナルな人材になればなるほど、駐在員の代わりになりうる人材を確保するのは簡単ではありません。

・現在、EPで働いている人のSパスへのランクダウンは 現実的か?
63% - 現実的である
37% - 現実的でない

Sパスは2011年6月までのEP(Q1)の最低給与$2500より低い$2000が最低給与に設定されている為、給与上昇が見込めない場合、現雇用先での就労を続けるにはSパスへのランクダウンは避けられません。但しSパスは企業の地元社員数に応じて取得枠が定められている為、どの企業でもSパスへの移行が可能であるとは限りません。事実、従業員の数が少ない企業はSパスは取得できず、またSパスの枠を使い切ってしまっている企業も多いです。

・既にEPで働いている日本人で転職(他国を含む)しなければならない人は出てくるか?
63% - 出てくる
25% - 出てこない
12% - わからない

現雇用先でEPの新基準を満たす給与を得られず、Sパスの枠が無い場合、シンガポール国内、あるいは近隣諸国(マレーシア・タイ・インドネシアなど)・日本への転職も視野に入れる必要が出てきそうです。

・シンガポールにおける日本人現地採用の全体の雇用数は減るか?
50% - 変わらない
25% - わからない
25% - 減る

・日本人を雇っていたポジションに代えて、シンガポール人の採用が増えるか?
50% - 変わらない
38% - 増える
12% - わからない

意見が分かれました。給与が上昇しても「日本人」が必要という考えがある一方で、給与上昇により、採用を減らす・見合わせる企業も出てくる(=シンガポール人の採用を増やす)という考えもあります。採用する企業の事情や考え方により異なるのでしょう。

・日本人を採用にあたって語学(英語)の重要度は増すか?
88% - 増す
12% - 変わらない

英語力が低くてもかまわない仕事ほど、給与も低い傾向があり、新制度の給与に見合うだけの価値を企業が見出すのは難しいようです。

・日本人採用にあたって職務経験の重要度は増すか?
100% - 増す

全社一致の見解です。給与水準が上がる=求められるスキルも上がる=経験・実積が重視される・・・ということで、今まで以上に経験を重視されるのは確実です。

・最後に、各人材紹介会社の担当の方に、今回の制度変更について求職者の方々に留意する点などを中心にコメントを伺いました。

『このたびの改正により、日本人だけでなく外国人全般が対象となり、シンガポール人の雇用を優先する方針がはっきりしてきました。新卒はワーキングホリデーパス、単純労働はDPからLOCを申請、その他パーマネントはPRもしくはPEP取得者に移行するのではないでしょうか?ただ、給料が高ければ下りるわけでそれほど大きく危惧する必要はないと思います』

『日本人の現地採用はコスト削減が目的であるが、家賃やその他の物価が高くなっている昨今、HDBをローカルファミリーとシェアしてまで当地で頑張っていこうという日本人は増えないと思われる。駐在員の代わりになるような気の利いた日本人は、そもそも日本国内でも需要があるため、わざわざ超円高の今、海外に活路を見出す火急の要は無い。求人企業のマインドセット変更が求められてくると思う』

『在星日本人、特に現地採用の待遇で働く日本人にとって、全体的そして将来的にみれば良いことと思います。当初のEPの目的と言うか、本来のEPの姿に戻るのだと思います。他国と比べてビザが取りやすいからという理由は排除されますので、英語力に加えしっかりとした知識と一本筋の通った日本国内での就業経験が求められます。それらを兼ね備えた求職者の方々にとっては、これまで下方に引っ張られていたお給料も上がり、現地採用であってもユニット借りができる時代になると思います』

『労働ビザは申請者とその就業する会社の両方を見て審査しますので、最終的には申請してみないと分かりません。最初から諦めずに挑戦して欲しいと思います』

『既にEPを持っている方に影響が出てくるのは7月からでまだ十分時間があります。旧正月以降の採用動向を見据えながら落ち着いて行動することが肝要。就職・転職活動では、EPが必要だから3500ドル以上を希望するのではなく、それだけの仕事で企業に貢献できることをアピールして適正な給与を希望すべき』

『スキル・経験を積んだ上で応募しなければならない。もし経験が短くても、特殊な資格、技術を持ち合わせていれば有利となる。自分を磨く努力が重要です』

アンケートご協力人材紹介会社(順不同):
テンプスタッフ グッドジョブ・クリエーションズ アージス・リクルートメント SDS(シンガポールで就職)
YNキャリアコンサルタンツ ファロ・リクルートメント セールスブリッジ RGF HR エージェント