飛行機での気圧の変化による中耳炎
Q:
3ヶ月の子が初めて飛行機に乗るのですが(片道6時間)注意する事を教えてください。気圧の変化による中耳炎になりやすいですか。シンガポールではスリーピングシロップを病院で貰い、子どもを寝かしたまま飛行機に乗せれるそうですが3ヶ月の子にはその薬は強すぎますか?
A:
赤ちゃんはどれぐらいから飛行機に乗れるのかという質問をよく受けます。健康な状態であれば、医学的にはいつでも飛行機に乗ることは可能です。ただし、各航空会社の規定で何ヶ月からというのがあるようなので、それは各航空会社にご確認ください。ちなみに以前JALに尋ねたところ、生後1週間から乗せてくれるようです。(生後1週間以内の場合、飛行機に乗る行為が悪影響を与えるのではなく、たとえ飛行機に乗らなくともまだ何が起こるかわからないので、その際にすぐに対応できるよう、飛行機には乗るべきではないということのようです。) 国内線なら生後1週間で乗れますが、国際線の場合、パスポートができないと飛行機に乗れないので、早くとも1ヶ月以降になってしまいますね。私の子供は生後1ヵ月半でシンガポールにやってきました。
一般的に、最も安心して飛行機に乗るには、首もすわってきて、人ごみにも出かけられるようになる生後3ヶ月ぐらいが適当でしょう。
飛行機で問題になるのは、気圧の変化、それによって酸素が薄くなること、それと湿度が低いことです。気圧の変化はおなかにたまったガスや中耳に影響します。酸素が薄くなることに関しては、低酸素の状態は、乳児には呼吸抑制に働くという論文もありますが、心肺機能が健康な乳児ではほとんど問題ないと考えていいでしょう。(機内の気圧はある程度調節されていますし、一時的なものです。高地で生活している乳児もちゃんと成長することを考えると問題ないでしょう。)湿度が低いと、気道の粘膜が乾きやすくなります。そうするとのどがやられたり、感染を引き起こしたりします。
飛行機での気圧の変化による中耳炎を航空性中耳炎と呼びます。これは大人だろうと子供だろうとなる可能性はありますが、構造的にむしろ乳児のほうがなりにくいようです。中耳と鼻を結ぶ耳管がつぶれてしまって、空気の出し入れができなくなったために起こるのですが、たいていの場合は着陸時(もちろん離陸時にも耳が痛くなる可能性がありますが。)に問題が起こります。皆さんもご存知のように物を飲み込む動作をすればこれは解消されます。乳児の場合、耳が痛くなれば泣くでしょうから、それで解消されるはずです。離着陸の際に白湯を飲ませたり、おしゃぶりを与えるのはいい方法です。ただし、離陸で気圧が下がるとおなかにたまった空気がふくらみ、気分不快や、嘔吐の原因になります。乳児はミルクなどを飲み込むときに空気も一緒に飲み込むので、離陸時にはミルクなどはあまり飲ませないほうがいいでしょう。
むしろ問題は風邪を引いていたりして上気道に炎症があったり、はじめから中耳炎をおこしていたりすると、耳管はつまりやすくなります。ですから、飛行機に乗る前に風邪をひかない様に注意するとか、風邪をひいた場合は搭乗を延期することが必要です。やむを得ない場合は医師の診察を受けて、上気道粘膜のむくみを取ったり、分泌物がつまったりしないようにする薬を処方してもらって、耳管狭窄予防のため、あらかじめ服用するようにしましょう。また、飛行機の中では空気が乾燥しているので、のどがやられないようにこまめに水分を取るようにしましょう。
眠り薬ですが、たいていの場合は乗り物酔いや鼻炎の薬(抗ヒスタミン薬)を使います。これらの薬は皆さんもご経験があるように眠気がでるわけです。乗り物酔いをするお子さんや、鼻炎や中耳炎を起こしやすいお子さんにはちょうどよいお薬です。特別強いお薬というわけではなく、3ヶ月のお子さんにも使えます。もっともそういった問題のないまったく健康なお子さんには、単に寝てもらうためだけに使うことになりますが、最終的にはご両親の価値観に基づいた判断になると思います。