妊娠中の消炎鎮痛薬

Q:
今妊娠20週目なのですが、もともと頭痛もちだったのですが、ロキソニンを飲んでいました。飲んでも赤ちゃんに影響はないでしょうか?私の主治医はシンガポーリアンなので日本の薬のことは、わからないと言われました。

A:
一般に、受精前から妊娠3週末までは、仮に薬の影響があっても妊娠が成功しない(流産)か、完全に影響が修復されるかのどちらかなので、長く残留する薬でなければ出生児に影響はありません。そういった意味では妊娠が明確になるまではあまり気にせず薬を服用できます。

妊娠が明確になったら注意が必要です。4週から7週末までは重要な臓器が発生・分化する時期なので、治療上の有益性が危険性を大幅に上回ると判断される場合以外は、薬物は極力避けるべきです。これ以後は胎児の薬に対する感受性は減少しますが8週から15週末には性器の分化や口蓋の閉鎖などがなされるため、ステロイドホルモン剤などの使用には慎重になるべきです。16週以降は臓器の形成は終了し、発育の時期となります。薬の影響は比較的受けにくいですが薬の種類、使用法、使用期間により異なります。

薬の添付文書には妊婦に対しては「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合だけ使用する。」「投与してはならない。」「投与を避けることが望ましい。」「安全性が未確立。」などの表記があります。しかしながらその根拠が症例報告に基づく確実度の高いものばかりとは限らず、単に妊娠中に投与したデータがないなどの理由でそうなっているものもあります。また、「動物で胎仔毒性」という表記もありますが、動物実験の結果では胎仔への有害作用の頻度を増大させるという証拠が得られているが、この点に関するヒトへの意義はまだ不明であるという意味です。

さて、ロキソニンについてですが添付文書には「妊娠中は治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合だけ使用する。」と記載されています。また、妊娠末期については、「動物実験で分娩遅延、胎仔の動脈管収縮がみられたため使用禁止」と、あります。同種の消炎鎮痛薬は全て妊娠末期は使用禁止です。
質問への答えですが、「多くの場合は問題ないが、全く大丈夫とは言い切れない」としかお答えできません。薬の使用に当たっては事前に薬服用の必要性とそのリスクについて医師と十分に話し合い、最終的には患者さん自身が納得のいく方法を選ぶ事が重要です。ちなみにロキソニンはシンガポールにはありません。類似訳はNaproxenです。

ラッフルズ・ジャパニーズ・クリニック 大西医師
シンガポール 知って得する医療の豆知識