東洋医学の効用や信憑性

Q:
当人は持病の慢性胃炎で悩んでいますが、シンガポールは中華圏ということもあり、漢方薬などの東洋医学を治療の対象として考えていますが、実際の所、医療としての効用や信憑性とはどういったものなのでしょうか。

A:
ご質問の内容は、西洋医学的に見て、東洋医学の効用や信憑性とはどういったものかということになるかと思いますが、そもそも西洋医学と東洋医学はその概念自体が大きく異なり、一方の概念でもう一方を評価することはあまり意味がないと思います。

西洋医学では、細胞や組織、臓器ごとの異常を診断して病名を定め、これに基づいて治療が行われます。

正常値という共通性を重視したうえで検査結果に基づいて病状を客観的に分析します。そして、人間全体よりも、病んでいる部分の病理に主眼をおきます。人間を同一のタイプであるとみなし、細かな検査結果から一定の確率で効果のあった治療方法や、薬の処方等を採用します。西洋医学は科学的根拠にのっとって確立されたものです。そういった意味で、西洋医学は統計学とも言えるでしょう。診断に従い、目的のはっきりとした治療が行われます。

対して、東洋医学では全身の不調和を整えるための治療法の判定に重きをおき、患者さんの個人差を重視して治療を行います。

東洋医学は「随証治療」といいますが、「証」とは、頭痛、下痢といった個々の症状を表す言葉ではなく、患者さんが現わす種々の症状を総合的に観察した上で、その病状を陰陽、虚実、気血水、五臓など総合的に捕らえた診断であり、その病人にはどんな薬方を与えれば治癒するかを判断するものです。東洋医学では病気は全身の体内バランス(自然治癒カ、免疫力)が崩れ、異常を起こしていると考えられ、また、たとえ「西洋医学的な病気」がなくても体内バランスの乱れがあれば治療を行います。

西洋医学は病気を見ますが、東洋医学は病人を見るのです。

以前より、東洋医学の治療(主に漢方)を西洋医学に取り入れる試みがなされています。漢方薬を薬理学的に分析し、薬効が客観的に証明されたものに関しては製剤化されて西洋医学でも使用されています。胃薬や風邪薬、抗がん剤まで様々なものがあります。また漢方薬の一部を東洋医学の概念そのままに医療用製剤として製造されて用いられてもいます。

よく漢方は副作用がないと誤解をしている方がいらっしゃいますが、薬効があるということは使い方を間違ったり、たとえ正しく使っても時に思わぬ副作用を招く可能性があります。ですから医師の処方、管理のもと正しく服用されることをお勧めします。

ラッフルズ・ジャパニーズ・クリニック 大西医師
シンガポール 知って得する医療の豆知識