近眼が手術によって、完治すると聞きましたが・・

Q:
近眼が手術によって、完治すると聞きましが・・・どういった手術なのか?費用はいくらかかるのか?しりたいのですが。私は少し乱視もあります。

A:
おそらく、レーシック(Laser in situ Keratomileusis)のことを言われているのではないかと思いますので、そのことについてお話します。
まずその前に近視とは何かをお話しなければなりません。
簡単に言うと、近視かどうかは眼球の構造で決まります。角膜や水晶体の屈折力と眼球の長さ(眼軸長)のバランスが合わずピントが合わない状態が近視で、像がぼやけてしまいます。ですから近視かどうかは眼球の構造がほぼ固定する3歳ぐらいまでの間に決定してしまうのです。といいますと、なぜ中学生や高校生になってから目が悪くなったり、テレビゲームをやりすぎると悪くなると言われているのかという疑問がでてくるでしょうがそれは本題とは外れますので、紙面の都合上他に回したいと思います。(来週号の当クリニックメールマガジンに掲載いたします。)
目の構造上の問題ですから、目薬やトレーニングで直らないことは明らかです。そこで、メガネやコンタクトレンズで眼軸長に見合った屈折力が得られるよう「矯正する」のです。目の構造が変わるわけではないので「治療」ではありません。
レーシックは、数年前から世界中で急速に普及し、眼鏡やコンタクトに並ぶ一般的な「視力矯正法」となりつつあります。日本では年間3万人以上が受けているといわれていますここシンガポールでも近視者が多いせいか、費用がかかるにもかかわらずかなり普及しています。

具体的な方法と原理についてお話します。
眼鏡やコンタクトをつけて光の屈折率をかえて焦点をあわせるのと同じで、エキシマレーザーというレーザーを使用し、正確にむらなく角膜を削ることによって眼の角膜の厚さを変えて焦点を合わせるというものです。単にメガネやコンタクトの役割を角膜におこなわせるわけなので、根本的な原因が解決するわけではありません。ということは厳密な意味では「治療」ではなく「矯正」です。
ようするにメガネやコンタクトのような矯正器具を目自体に負わせるわけです。メリットは矯正器具のように手入れを必要としないこと、つけているわずらわしさがないことですがその代わり、作り直したり取り外したりできないという問題があります。
レーシックは角膜を薄く削るわけですが、フラップを作る(角膜を削る前に表面をふたのように開けますが、それをフラップと呼びます。)マイクロケラトームとともに、機械の性能が重要です。というのは、角膜は非常に薄いものなので、削る部位と厚さが適切でないと十分な効果が得られなかったり、効果が出すぎることにつながります。正確に削ることが重要なのです。医者は検査をもとに機械をセットするだけで、あとは機械が自動的に削ります。ただし、最も重要なのはやはりそれを扱う医者で、十分な治療経験をつんでいるかという点が必要とされるでしょう。医者と治療機器の両方が充実した病院を選ぶことが大切だと思われます。

処置自体は10分で終わり、日帰りで受けることができます。処置後は感染予防に点眼が必要です。治療が失敗することは非常に稀だといわれていますが、処置後には多くの人が、「ハロ」と呼ばれる症状を体験します。夜間や蛍光灯の下でまぶしく感じたり、光の周りがぼやけて見えたりします。この他には、非常にまれですがフラップを作るときや戻すときに問題があって角膜表面にしわが出来たり、ドライアイの症状がでたり、感染症にかかったりすることもありえます。

費用に関してはシンガポールのほうが若干安いようですがそれほど大きくは変わりません。先ほどもお話したように「治療」ではなく「矯正」とみなされるので、健康保険も傷害保険も使えません。基本的に自由診療ですから日本でもシンガポールでも費用はまちまちです。2000ドルから5000ドルぐらいと思われます。

削り加減がうまくいけば適切な視力が得られますが、削りが浅ければ近視の改善も中途半端になります。逆に深すぎると遠視となります。また、だれしも将来的には老眼(遠視と同じような状況)に移行するわけですが、それが早く出たり、強く出る可能性は否定できません。まだ新しい治療なので、将来の事態に関しては不確かな部分が多いのは事実です。ですから、基本的には医学的、職業的、その他の理由で眼鏡、コンタクトレンズを使用することができない方のための治療です。ホームページなどでもよく取り上げられていますので、それらを参考に決めてはいかがでしょうか。最終的にはご自身の価値判断で決めることではありますが、個人的には、近視は構造上のバリエーションで病気ではないですから、外科的処置で不可逆的な矯正をするのは、上記のようなやむを得ない場合を除き、おすすめできません。

ラッフルズ・ジャパニーズ・クリニック 大西医師
シンガポール 知って得する医療の豆知識